グラスリッツェンは、多くのガラス工芸の中でも、もっとも繊細なものですが、1970年代のスイスにおいて、故ゲルリン・メグロー夫人がダイアモンドポイントの新しい写実的技法として確立し、芸術の域まで高めたものです。メグロー夫人は、多くの作品を残しただけでなく、グラスリッツェン専用の針を開発し、グラスリッツェンのための多くの下絵も制作しました。ガラスをこすって傷をつけるという意味のドイツ語である「グラスリッツェン」の名称もメグロー夫人が 名づけたものです。メグロー派グラスリッツェンでは、メグロー夫人の直伝の技術と下絵を日本で唯一継承し、グラスリッツェン高い技術の保存と継承を目指しています。
ダイアモンドの針でガラスに傷をつけて模様を描いていく工芸ダイアモンドポイントガラス彫刻は、ヨーロッパの歴史上何度か現れています。最も古いものでは、紀元前のローマの遺跡からも出土したものがありますが、本格的なものとしては、16世紀隆盛したベネティアのガラス工芸作品の一部に、線描きでの表現がなされました。さらに、18世紀には、植民地貿易や産業革命で隆盛してきたオランダ、イギリス、ドイツにおいて点刻による繊細で芸術的な作品が制作されました。そして、それから200年後のスイスにおいてメグロー夫人によりダイヤモンドポイントの新たな技法、グラスリッツェンが現れたのです。